elementary os 7 on VAIO S11 備忘録と雑感です.
結論から記すと,
問題なく使えますが,機器特有のキーボードバックライトの調整とバッテリーいたわり充電の切り替えとかはできない!
です.
VAIO S11 について
Sony からスピンアウトした VAIO 株式会社の初代11インチノートPCで(正式な型番は VJS111)です.実は本 blog 開始直後の2016年5月に記事
になっています.つまりすでに発売から7年経ったモデルで,Windows 11 には当然未対応ですが,スペックは,
- 11inch 重量 1kg 以下 FullHD 液晶
- Core i5-6500
- 8GB メモリ
- 256GB NVME SSD
- 802.11ac + LTE
- Thunderbolt3, 有線LAN, SDカードポート,USB-A ポート,アナログRGB
とそれなり.まだまだ使えるモデルだと思います.
導入理由は,Macbook Air 2013 11inch に代わる Linux 機として使いたかったから.記事
にも書きましたが,もともとは Macbook pro 2017 をこの用途で使おうと思っていたのですが,2015年以降の Macbook は Linux でかなり再利用しにくいことが分かり,代わりになる安価な機種を探した結果です.もちろん中古でお値段は約2万円.バッテリー容量が少し心許なくなっている以外は全く問題がありませんでした.
elementary os 7 について
本 blog でも何度か取り上げていますが,Ubuntu 系の Linux ディストリビューションで,特徴は「キレイなこと」です.少なくともデスクトップは macOS 並にキレイで,もともとは Ubuntu なのでハードウェアの認識等についてもかなり良いところまで行きます.
2023年2月に Ubuntu 22.04 ベースの ver.7 になり,ちょうど良いタイミングということもあり,今回,導入しましたが,
- デスクトップがない!(ChromeOS と同じ感じです)
- 実際に使えるようにするにはかなり追加でアプリ等を入れないとダメ
なので,決して初心者向きではないと思います.オリジナルのブラウザやメールアプリなどを売りにしているようなんですが,正直全部いらない.素直にブラウザから Google か Microsoft のサービスをほとんどの人が使うと思います.
しかし画面がキレイなのは確かですし,Ubuntu よりゴチャゴチャしていないので初期設定を頑張れば非常に使いやすくできるので,Linux デスクトップの選択として悪くはないと思います.
導入時に注意すること(ハードウェアの対応)
導入時に注意しないといけないことはありません.ISO イメージから普通に何のトラブルもなくインストールできます.ハードウェアの対応について LTE 含めて問題ないですし,スリープ等からの復帰についてもほぼトラブルはありません.Thunderbolt3 もきちんとつかえます.しかし,唯一,
キーボードバックライトやバッテリーいたわり充電の制御などを行う「VAIOの設定」アプリ関係の機能がどうにもならない
です.例えば Windows でいったんバッテリーいたわり充電モードにしてしまうと Linux 側からは元に戻せなくなってしまいます.
この部分,Sony からスピンアウトする前の VAIO の場合は,sonypi もしくは sony-laptop という Linux Kernel module で制御できていましたし,私もそれを期待していたんですが,VAIO 株式会社製の VAIO はこの辺りの仕様が変更されたようで,これらのモジュールが動いてくれません.
insmod を用いて明示的に読み込んだり,dmesg の表示を見ながらモジュールのソースコードを少し変更したりもしてみましたが今のところどうにもなりません./sys/devices/platform/ 以下に VAI0001:00 というフォルダが見えるので,恐らく制御用のチップはきちんと認識されているのだと思いますが,少しモジュールを書き換える程度ではダメなんだと思います.
アプリの導入等については以前の記事,
をご覧ください.
ただし,いまだと Chrome も flatpak で導入する方が簡単です.また,flatpak で Chrome を導入してドッグに登録すると,起動時アイコンが2つ表示され邪魔になりますが,これは,StartupWMClass=google-chrome を以下のように com.google.Chrome.desktop ファイルに追加することで一つだけ表示されるようになります( ***** は非常に長いランダムっぽいフォルダ名).
> cp ~/.local/share/flatpak/app/com.google.Chrome/currrent/******/files/share/application/com.google.Chrome.desktop ~/.local/share/applications. > vi ~/.local/share/applications/com.google.Chrome.desktop .... Name=Google Chrome StartupWMClass=google-chrome GenericName=Web Browser ....
あと,Window のタスクマネージャーに相当するプログラムとして Pantheon-monitor がなかなか良い感じです.
お試し頂ければと思います.
最後に,残念ながら Ubuntu 22.04 と違い elementary os 7 には Thunderbolt3 を GUI で有効・無効化できません.これは boltctl コマンドで CUI で制御する必要があることにご注意ください.なお,boltctl コマンドは,
$ sudo apt-get install bolt
で導入できます.
elementary os 7 on VAIO S11 雑感
Linux の場合,ハードウェアサポートの問題から,導入する PC はどうしてもある程度枯れたものにせざるを得ないのですが,今回の VAIO はちょっとあてが外れた感じです.
十分に実用的ではあるんですが,キーボードバックライトやいたわり充電が制御できないってのはやっぱり不便です.また,バッテリーがかなり劣化しており,寿命が近そうなこともかなり問題です.交換用バッテリーも厳しいです.Amazon で検索しても VJS112 のもの
なら見つかりますが,VJS111 には対応しないので注意が必要です.
Sony 時代は世界中で販売されていたからだと思いますが,メーカー特有の機能を制御する部分でもよほど特殊なものでない限り7年も経てば何処かの誰かの手で作られていたと思います.また,バッテリーも互換品がそれなりに出回っていたと思います(本製品のバッテリーは VJ8BPS48 です)が,すでに手に入らない,もしくは手に入ってもすごく高価です.
あと,残念ながら本製品の場合,ACアダプタが 10.5V と特殊なことと,USB-PD に未対応なことも使いにくいなぁと感じさせる要因になっています.バッテリーが劣化しているので AC アダプターを持って行かざるを得ないからです(USB-PD 12V トリガケーブルも使ってみましたが,起動したままだとまともに給電できません.電源断だと大丈夫なことが多いですが,電圧的に大丈夫かは保証はできません).
11inch + FullHD + Thunderbolt3 対応なので,Linux で再活用する対象としては悪い選択とまでは言えないですが,最善かと言われると,Lenovo や DELL などの方が無難なんじゃないかなと思います.
なお,本製品自体は,冒頭で紹介した blog でも書きましたが先見の明のある良い PC だったと思います.2016年の時点で 1kg を切っていて FullHD で USB-C だけじゃなく Thunderbolt3 対応 PC って Windows だと他にないですしね.唯一 USB-PD 搭載でないことだけが残念なところです.このモデル以降の VAIO はビジネス向け(保守的)になってしましましたし,最新のモデルFだと Thunderbolt4 未採用ですしね.少なくとも先進性はあまり感じられなくなってしまったのは残念です.VAIO さん.国内メーカーだから応援はしたいんですけどね.
以上!