NEC X2207 雑感です.
いつもの通り結論から記すと,
ファームウェアがそれなりに新しいならいろいろできるので良い選択!
だと思います.
導入理由
自宅用のメインルーターとして導入しました.
いままで,Ubiquiti Edgerouter-X を最初は標準のファームウェアで,昨年度はじめくらいからは openwrt で利用してきましたが,標準のファームウェアだと,map-e 接続に対応できず,openwrt だと設定しても意図通り動いてくれない(設定は正しいはずだがその通りどうしても動いてくれない)ことがそれなりにありました.
このため,map-e に正規に対応した VLAN 等も使えるものへの置き換えをもう1年以上検討していたのですが,今回,もちろん中古ですが,NEC IX2207 の(多分)最新ファームウェアのものをかなり安価に手に入れることができましたので,さっそく Edgerouter-X から置き換えてみました.
以下,Edgerouter-X と比較した IX2207 の良いところ,悪いところを記していきたいと思いますが,まずは簡単に仕様等についてまとめておきたいと思います.
IX2207 の概要
NEC IX2207,この blog を見にくる人にとっては言わずと知れた日本の業務向け定番ルーター IX シリーズの製品で,公式ページは,
です.2014年発売で,もちろん最新のラインナップからは外れていますが,ファームウェアの提供等はまだ継続的に行われているようです.
すでに発売から8年経っていることから,定価10万円を超えるものですが,企業のリース落ち機器なのだと思いますが,現在は,中古ですが安価に手に入るようになっており,逸般の誤家庭用として最適?な機種です.
ポートは,
- WAN2ポート(GE0, GE1)
- LAN4ポート(GE2,レイヤー3スイッチ相当)
- シリアルポート
- USB2ポート(コンフィグおよびLTE等のデータ通信用)
で,Ethernet ポートは全て Gigabit に対応しており,一応,公式サイトによると,転送性のは,
- 最大2Gbps の IPv4 基本性能
- 最大1Gbps の IPsec 性能(AES256/SHA1)
となっているので,対外回線が 1Gbps な光回線で使うのなら十分な性能が(仕様上は)あります.また,ファームウェアの更新も頻繁に行われており,さらに日本のメーカー製なので,日本のプロバイダで使われる接続方式については最新のものもファームウェアの更新により(多分)全対応,もちろん業務用なので,VLAN やルーティングについてもかなり柔軟に行うことができます.まぁなんと言うか,書いていてホント逸般の誤家庭用として鉄板ルーターだと思います.
IX2207 の良いところ
さて,ここからは IX2207 の今まで使っていた Ubiquiti Edgerouter-X と比較して良いと感じたところを以下3つ挙げておきます.
まず1つ目は,
日本のプロバイダで使われる(多分)全ての接続方式に標準で対応しており,その設定例がきちん日本語で示されている
ことです.本製品(に限らずIXシリーズの場合)は,接続方法だけじゃなく,実例に即したさまざまな設定例が以下のページに公開されています.
プロバイダを具体的に指定した設定例も多く,安心して設定することができるのは間違いなく良いところだと思います.ただし,比較的最近の接続方式に対応するのは最新の 10.3 系列からなので,気をつけないと手に入れても使えないってことになります.
2つ目の良いところは,
設定した通りに動くことを期待できる
ことです.
何を当たり前のことを言ってんだと思うかもしれませんが,この類の製品は,機能が有効になる順番とかバグとかで,設定してもその通り動いてくれないことが結構あり,実際に Edgerouter-X もこの問題にかなり苦しめられてきました.IX2207 の場合はこれが(少なくとも私が使う機能の範囲だと)全くありません.またもちろん安定して動いてくれます.
3つ目ですが,IX2207 は Edgerouter-X よりかなり実際の転送速度が速く感じます.インターネット Speedtest の値はあまり変わらないのに,体感としていろいろな接続が速く感じますし,特に,
Softether VPN の転送速度が Edgerouter-X 時の2.5倍程度速い
です.IX シリーズはショートパケットに強いという話を聞いてはいたのですが,こんなに違いが出るとは思ってもみませんでした.
つまり IX2207 は Edgerouter-X と比べると,ルーターとしての基本の部分が大きく上回っていると思います.IX2207 は定価10万円,Edgerouter-X は50ドルと元々の価格が違いすぎるので当然だと言われるとその通りなんですが,いまだと実際に手に入る価格は完全に逆転していますので,いまから Edgerouter-X を買うのはさすがにないよなぁ……って思います.
IX2207 の良くないところ
と言うことで,ルーターとしては IX2207 の方が Edgerouter-X より圧倒的に上だと思うのですが,もちろん Edgerouter-X と比べてダメなところもかなりたくさんあります.これは結構数あるので以下に列挙したいと思います.
- Edgerouter-X の方が圧倒的にコンパクトで見た目も良いです.また,少し特殊な 24V 出力の変換は必要ですが Edgerouter-X は PoE に対応しています.
- IX2207 の方がかなり熱を持ちます.かなり狭いところに押し込んで使っていることもありますが,室温23度で内部温度58度です.実際触るとかなりアチアチです.
- 遊べるのは Edgerouter-X です.openwrt を入れるとそれこそ何でもできます.
- GUI 操作画面のデザインと使い勝手も Edgerouter-X > openwrt on Edgerouter-X > IX2207 の順で悪化します.と言うか,IX2207 は非常に基本的なことしか GUI で設定できないので CUI 必須です.
- 設定に失敗したときのダメージは IX2207 の方が深刻です.IX2207 は設定を入れるとすぐに有効化されますので,ちょっと下手をうつと手も足も出なくなり,シリアルコンソールでの操作を余儀なくされます.物理リセットボタンもないので,ホントどうにもならないです.
- IX2207はファームウェアが公開されていません(NetMaister というネットサービスに機器を登録するか,申請書を NEC に提出しないとダメらしい).
以下参考までに Edgerouter-X,openwrt on Edgerouter-X,IX2207 の GUI 画面のイメージを示します.なんと言うか,IX2207 は20年くらい前とほぼ変化のない画面だと思います.業務向けなのでこれで良いと言われれば……良いんですかねぇ…….
あと,Edgerouter-X から IX2207 にして困ったことは,広告フィルタです.Edgerouter-X の場合 openwrt を入れると adblock パッケージを入れることができますが,これがかなり強力で重宝していました.また,DNS まわりも openwrt on Edgerouter-X の方が柔軟に設定できました.仕方がないのでこれらの機能は別の方法で補うことにしましたが,管理は openwrt on Edgerouter-X 時代の方が楽でした.
基本性能は IX2207 の方がだいぶ上ではありますが,自宅で使うルーターとしてはある程度オールインワンで使えた方が楽だよなぁ……と変えてみてつくづく思います.
まとめ
と言うことで,現在我が家では IX2207 がメインルーターとなり,Edgerouter-X は引退となりましたが,Edgerouter-X,2017年からほぼ5年使いましたし,1万円しなかった製品なので悪く無い選択だったと思います.
今回の件,openwrt on Edgerouter-X がなかなか設定通り動いてくれないってことがストレスでやったことなのですが,もともと openwrt ってそういうものです.また,特に openwrt の現在の ver. は firewall3 から firewall4 に全面移行してすぐなので,オプションのパッケージがまだこれに対応していないことが多いです.つまり,firewall4 なのに古い firewall3 の機能を用いているパッケージを用いることで機能がバッティングしてしまった結果,きちんと動かないってこともかなりあったんじゃ無いかなと思います.
と言うことで,Edgerouter-X はこのまま手放さずに,しばらく様子を見てみたいと思います.それに Edgerouter-X ってすごい小型ですしね.何の機能もない同じポート数の小型スイッチの大きさしかありません.つまり,超小型のL3スイッチとしても破格なので,この用途に使うって手もあります.ルーターとL3スイッチの何が違うのかと言われると個人的には「何が違うんですかねぇ……」となってしまうんですけどね.
以上!