Raspberry pi4 雑感です.
いつもの通り結論から言うと,
確かにスペックはかなり高くなってて,デスクトップ用途でもつかえそうな感じはするんですが,サーバーとしては少し使い辛い
気がします.
AES-NI に対応してない……
購入したのは Raspberry pi4 のメモリ 4GByte のものです.お値段は付属品合わせて約1万円くらい.
Raspberry pi4 になって,個人的に最も期待したのが,
- Gigabit Ethernet に対応したこと
- USB3.0 に対応したこと
でした.これで結構本格的なサーバーにも使えるなぁ……と思ったからなんですが,実際に届いて色々見てはじめて Raspberry pi4 は
AES-NI に対応してない!
ってことに気がつきました.実際,CPU の対応を見てみると,
$ cat /proc/cpuinfo processor : 0 .... processor : 3 model name : ARMv7 Processor rev 3 (v7l) BogoMIPS : 108.00 Features : half thumb fastmult vfp edsp neon vfpv3 tls vfpv4 idiva idivt vfpd32 lpae evtstrm crc32 CPU implementer : 0x41 CPU architecture: 7 CPU variant : 0x0 CPU part : 0xd08 CPU revision : 3 Hardware : BCM2835 Revision : c03112 Serial : 100000004a5bbb71 Model : Raspberry Pi 4 Model B Rev 1.2
で,Features の部分に aes がありません.
AES-NI というのは,AES 暗号の暗号化と複合化を支援する CPU の命令セットで,このあるなしで openssl の処理速度が大きく変わってきます.実際に openssl でベンチマークをしてみると,Raspberry pi4 の場合は,
$openssl speed aes-256-cbc ... The 'numbers' are in 1000s of bytes per second processed. type 16 bytes 64 bytes 256 bytes 1024 bytes 8192 bytes 16384 bytes aes-256 cbc 57447.63k 62615.95k 64300.63k 64794.62k 64946.18k 65135.99k
な感じ.evp を有効にしてももちろんほとんどスピードは変わりません.というか,逆に遅くなってます.
$ openssl speed -evp aes-256-cbc ... The 'numbers' are in 1000s of bytes per second processed. type 16 bytes 64 bytes 256 bytes 1024 bytes 8192 bytes 16384 bytes aes-256-cbc 50070.20k 60053.31k 63663.27k 64634.54k 64907.95k 64913.41k
それでも AES-NI なしの Core i5-2520M に少し劣るくらいの速度はあるみたいですが,AES-NI ありのものとはやっぱり比較できません.
openssl って暗号化処理を行うありとあらゆるソフトで使われてて,経験的に高速にこれが実行できるかどうかってかなり使い心地に影響があります.特に VPN のセッションを張るとかには影響があるはずです.
いままでの Raspberry pi だとネットワークが遅かったので,暗号化・複合化処理がそんなに速くなくてもそもそもネットワークの帯域が100Mなので問題が顕在化しなかった訳です. しかし,Raspberry pi4 は Gigabit に対応したので,暗号化・複合化の部分が足を引っ張る場面が確実に出てきそうです.だから,サーバーとして使うのは少し微妙な感じだよなぁ……という結論になりました.
デスクトップ用途だと……
じゃあデスクトップ用途だとどうかと言うと,これは少なくとも体感的にはかなり良い感じです.Raspberry pi3 まではやっぱりかなりモッサリしているなぁ……思っていたのですが,少なくとも私の場合は全くこれを感じなくなりました.
実際に Raspbian の最新版をフルインストールして使ってみると,
普通に4Kのモニタを認識して,ブラウザも Chronium がかなりサクサクと動きます.Youtube 動画もスムーズに再生しますし,少し設定するだけで Bluetooth スピーカーも普通に使えます.
また,Office 系のソフトを複数立ち上げ使ってももたつきをほとんど感じません.
特筆すべきはやっぱり Mathematica です.これ,普通に買うと20万円くらいします.Raspberry pi だとこれがタダで使えるのですが,全く起動速度,実行速度両方気になりません.もちろん重い計算をさせれば別なんだと思いますが,微分や積分も計算できる高級電卓として使うレベルなら全く問題ない速度で動いてくれます.
なお,知らなかったんですが,Mathematica,処理スピードのベンチマーク結果を出力できます.実際に Raspberry pi4 と手持ちの Macbook air 11 (mid2013) でベンチマーク結果を出力してみた結果を以下に示します.
まずは Raspberry pi4 です.
遅いのは確かなんですが,10年前くらいのミドルスペックの PC と同じくらいのスピードで処理できることが分かります.なお,Ubuntu on Macbook air 11 (mid2013) だと以下の通り.もちろん Mathematica は(お仕事で使ってる)製品版です.
なんか間違ってるんじゃないかなと思うんですが何度やり直してもこうなります.Linux で動かしてるからかなんなんだか分からないんですがやたら速い.10倍以上 Raspberry pi4 より速いです.
と言うことで,Raspberry pi の元々の開発目的である教育用って意味では,十分以上の性能があると思います.ただし,今回採用された micro-HDMI は正直どうかと思う.
micro-HDMI ケーブルなんて普通持ってないし,micro-HDMI 変換ケーブルってそんなに安くないです.
micro-HDMI にすることで2台のディスプレイに同時出力できるようになったってのが今回のアップデートの売りの一つのようですが,個人的には Raspberry pi をデュアルディスプレイ化して使う用途が思い浮かびません.2画面に出力すれば確かに色々ソフト立ち上げても使い易いのは確かですけど,その分場所が必要ですし……教育用に使う場合は機材の置き場所そんなに広く取れないでしょうから,そもそもデュアルディスプレイになんか場所が無くてできないんじゃないかなと思うんですけどねぇ.
以上!